2022.5.9
市役所に出生届を出しに来た。
市役所の待ち時間は何をするべきかよくわからない。
待たされる割に面白いコンテンツが一つもない。
かといってSNSを開いていても、暇な時にSNSを開くことしかできない自分に嫌気がさしアプリを閉じる。
しかたなく市役所で働く人を眺める。
女性が多い。
みんな同じような髪型で同じような雰囲気。
どこかアイドルグループのように見えてきた。
窓口に呼ばれる人。呼ばれるのを待つ人。
アイドルの握手会のようだ。
むろんアイドルの握手会には行ったことがないんだけど。
自分が配布された番号が呼ばれた。
番号で呼ばれるのは刑務所か市役所ぐらいだろうか。
そんなことはないか。
少し年配のアイドルが対応してくれる。
マスクをし、間にクリアボードが置かれているせいか声が聞こえづらい。
いや、ボリュームの問題か。
アイドルだったら致命的だ。
手続きが進み、少し窓口の前で待つ。
横の窓口に高齢の女性が呼ばれた。
ご主人が亡くなり死亡届を出しに来たと言う。
凛とした声から突然亡くなったわけではなくご主人が亡くなることは分かっていて、覚悟していた別れだったのかなと勝手な想像をする。
出生届を出す自分と死亡届を出す隣のおばあさんと忙しそうなアイドル。
市役所はかなりカオスな空間だ。
産まれてからベッドとおっぱいを行き来している娘。今市役所で行われている手続きは娘が知らない間に娘と社会とを接続させる。
横のおばあさんはご主人を社会と切り離す。でも社会から切り離されても、このおばあさんや家族、友人の記憶に亡くなられたおじいさんはいてるはずだ。
産まれてから死ぬまでを人生と呼び、その人生を市役所に挟まれている人間。
しかも最初と最後は自分自身ではなく、誰かに手続きされる。
社会と接続されるのも切り離されるのも自分ではできないんだ。
手続きが終わり、市役所を出る。
娘が産まれ、たくさんの人に祝福してもらい喜ばしい毎日を過ごしている。その傍で人生を終え、最後の市役所を迎える人だっている。
人生ってなんなんだろうかと思いながら、車のエンジンをかけ市役所を後にした。